調査の結果報告


初期結果について

今回お示ししますのは、概ね5月中にご協力いただきましたインタビューおよび書き込んでいただきました体験談について、調査チームで、一部分を分析してまとめたものです。この結果は、オックスフォードで開催されました The 2018 International Health Congressと、ロンドンの大和日英基金で開催されたイベント'The Penal Code in Japan: Sex without consent isn't rape? A talk with the first incorporated sexual assault survivors' organisation in Japan'(「同意がないセックスでもレイプにならない、日本の刑法を変えたい! 性暴力被害当事者団体Springとの交流イベント」)で発表をいたしました。

これまでご協力いただきました皆さま、そしてこれからご協力を検討くださっている皆様に、ご協力いただいた結果がどのような形で社会に届けられるのか、一例としてご確認いただければと思っております。(なお、結果は、あくまでもご協力いただいた内容の一部です。)

そして、皆様から、今回の結果についてご意見・ご感想(分析結果とご自身の体験を照らし合わせて考えたこと、感じたこと、あるいは当事者の方でなくとも、分析結果をみて考えること)をいただきたく考えております。ご意見、ご感想をお寄せいただける方は、こちらのページからお願いいたします。

今回の調査は、主に「望まない性交」を経験した当事者の方の声を、社会に届ける調査です。そのため、結果にも、できる限り当事者の方の声を反映したいと考えています。

つきましては、結果について、以下の文章をご参照ください。

また、PDFを見ていただきますと、実際にIHCで発表したポスターの日本語版を確認いただくことができます。


ご意見をお待ち申し上げております。

なお、いただきましたご意見(公表許可をいただいたもののみ)については、8月末頃に全てまとめた「ご意見の概要」という形でこのウェブページで公表する予定です。

【結果】

問題の設定
・日本の刑法においては、「13歳以上の被害者の場合、被害者の抵抗を抑圧するほどの暴行または脅迫」がある場合にのみ強制性交等罪となります。「望まない性交」がすべて強制性交等にはなるわけではありません。
・2017年の性犯罪に関わる刑法改正の際に、被害当事者や支援者は、この暴行脅迫要件を撤廃するよう希望を伝えました。
・しかし、刑法学者や司法関係者から「不同意性交は被害者の主観に過ぎず、立証することが難しい」「暴行脅迫がなければ、それが犯罪であったという証拠になるものがない」といった反論がありました。
・この点には、日本の文化的な問題も関わります。確かに日本では、性交に限らず様々なことについて、目上の人に明確な不同意や拒否を示すことがよしとされません。特に女性は、慎みがないことが女性として失格である、という理由から、性交において明確な拒否を示すことができません。
・従って、次の二つの点を明らかにすることが必要だと考えました。

【今回の分析で明らかにしたいこと】

・暴行脅迫のない不同意性交はどのようにして起こるのか
・日本の女性はどのようにして性交に同意を与えているのか

私たちは、上記の目的のために、今回、26名の成人女性のインタビュー及びウェブ上の望まない性交に関する自記式の体験談を対象として、その内容の一部について分析を行いました。

【方法】
・対象:26名の成人女性の、インタビュー及びウェブ上の自記式体験談
・方法:テーマ分析を用いた
・調査チームのトレーニング:インタビューに回答くださる方に二次被害を与えないため、WHOガイドラインに準じたトレーニングを行った

【結果】

「望まない性交」のタイプ
①「エントラップ(陥れ・追い込み)型」
②「飲酒・薬物使用型」
③「奇襲型」
④「児童期の性虐待」
⑤「パートナー・レイプ」
→「飲酒・薬物使用型」の飲酒に至る過程にエントラップ型が見られたり、「児童期の性虐待」に「奇襲型」が見られるなど、重なっている部分もあります。

・最も日常の中で発生する、不同意性交の典型的なパターンは「エントラップ(陥れ・追い込み)型」です。語られている不同意性交の多くに、この型のプロセスが見られました。

・まず、相手が見知らぬ人であっても見知った人であっても、最初は日常会話から始まります。そして日常会話の中で、加害者は、被害者に対して自分の価値を高めて権威づけたり、被害者を脅しや貶める言葉を使って弱体化させ、上下関係を作り出していきます。上限関係が作り出されたら、被害者を暗い所や車の中などの死角に追い込み、物理的に逃げ道をふさぎます。また、日常会話の中に突然性的な話題を挟みこんでいきます。そして、被害者が弱ったところで、弱みに付け込む形で性交を強要します。

・相手が知人の場合には、加害者がもともと被害者よりも地位が高く上限関係があり、すでに被害者の弱みを握っているため、このプロセスが一層行いやすくなります。被害者の弱みは、時に、被害者が加害者に寄せる好意であることもあります。好意を利用する形で逃げ道をふさぐのです。日本では、女性や下の立場の人間は従順であることが良しとされますし、多くの人が、人間関係で波風を立てることを避けようとします。従って、被害者は余計に、加害者に強く出ることはできず、プロセスは促進されます。

・上下関係を作り出されたうえでの不同意性交は、性暴力です。

・女性がどのように性交に同意を与えているのかについては、以下のような結果が得られました。

・そもそも、性交以前に、日常生活の中にお互いを尊重しあう対等なコミュニケーションがありました。それは、女性は自分の意思や拒否を日常的に男性に伝えられている関係性、男性は生活のさまざまな場面で女性の意思を確認し、拒否されたらそれを尊重している関係性です。

・尊重しあう関係性があっての、同意性交は、愛のあるセックスと言えます。

【結論】 

・「性交におよぶ以前の日常的な関係性や接し方」が、同意・不同意性交を左右していました。
・暴行脅迫のない不同意性交は、日常的な上下関係、力関係の圧力から陥れられ・追い込まれる形で発生していました。これは、現在の日本の刑法では性暴力と認められませんが、最も典型的な被害経験のパターンです。
・反対に、心から性交に同意する場合、女性たちはまず、互いを尊重し合う対等な関係性を結び、その延長として性交にも同意を与えていました。つまり、生活の中で尊重し合うコミュニケーションは性交同意に不可欠であると言えます。
・今後は、「性交に至る以前の上下関係(力関係)の構築」があったか否かが性暴力を規定する重要な要因であることを、刑法改正の議論に反映させていく必要があると考えられます。

【今後について】

本研究はまだ初期調査の段階であり、今後、さらにインタビューや自記式の体験談の収集を重ねていき、上下関係が作り出されていくプロセスを詳細化していきます。また、飲酒・薬物型の発生プロセス、過去の性暴力被害がその後の性暴力被害の発生プロセスに与える影響についても、検討していきます。

【意見の募集について】

皆様から、今回の結果について意見・感想 (分析結果とご自身の体験を照らし合わせて考えたこと、感じたこと、あるいは当事者の方でなくとも、分析結果をみて考えること)をいただきたく考えております。
こちらから、ご意見・ご感想をお寄せください。

8月末頃にいただいたご意見の概要を、このサイトにて公表する予定ですので、ご意見は8月上旬までの募集とさせていただきます。

(C)性暴力の被害経験に関する調査チーム
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